電脳と蒸気と生ける屍のはざまで(2)

ゴシック&ロリータの起源

橋本愛(1996~)の場合
【画像引用 ムービーウォーカー】
「ゴシック(Gothic)」は12~15世紀にかけてヨーロッパにおいて展開された建築様式の呼称ですが、同時代の美術様式を指すものとしても使われました。18世紀にこのゴシック復活の動きが様々なジャンルに現れ、特にゴシック小説と名付けられた一連の怪奇・幻想系の小説によって、その名が改めて巷間に知れ渡れるようになりました。
このムーブメントは更に時代を下り、1970年代以降のロックやファッションに影響を与え、その中からゴシック・ファッションが生まれました。
「ロリータ(Lolita)」はウラジミール・ナボコフ(1899~1977)の同名の小説(1955)からくるものです。物語は少女性愛者の行動を通して、彼の希望と絶望を描いたものです。内容は度々問題視され、発禁の対象にも度々なりましたが、現在では名作として扱われており、映画化が2回行われました。この内容からロリータは少女性愛者を表す言葉として使われるようになり、どちらかというと忌避すべき存在として扱われるようになりました。一方ロリータ・ファッションは少女性愛の部分は排除して、少女性にのみ着眼して形作られたものです。
「ゴスロリ(Gothic & Lolita)」はこの別々の出自を持つものを一体化して、特にファッション分野において新しく作られたものです。
これらのムーブメントはいずれもヨーロッパに起源を持つもですが、日本のサブカルチャー文化のなかで発展し、現在では日本での動向が西洋社会に逆輸入されている状況です。

上坂すみれ(1991~)の場合
【画像引用 ばる通信】

闘う大天使

映画「下妻物語」より
【画像引用 AMEBA】
ゴスロリ文化は一定の評価を得ている反面、オタク文化のように偏見の対象になっている側面もあります。この点をうまく作品として展開しているのが、嶽本 野ばら(1968~)の小説「下妻物語」(2002)で、映画化(2004)もされかなり話題になりました。ロリータ・ファッション愛好家女子とヤンキー女子の友情を描いており、地方文化の描き方と、マイノリティー視線の面白さで、特筆される作品です。

何年か前の話ですが、私の知り合いの娘さんで、当時高校生のゴスロリ・ファッションの好きな方がいました。彼女は希望をもって入った高校が、「自由な校風」をうたい文句とはうらはらに、様々な規則と締め付けにうんざりしていました。それ以上に嫌気がさしたのは、入学式の際に校長が「君たちは私たち熟年世代の老後を支えていってほしい」云々の発言でした。そのため入学数か月で不登校になってしまいました。
私自身の経験からも、不登校に対してはあまり周りがゴチャゴチャ言わず、本人の考える時間の作ることが、良い方向に導けるセオリーだと思います。しかし学校が行ったのは、毎日のように連絡を行い、たびたび家庭訪問をするという、セオリーを無視した行動に出たようで、学校に抵抗しつつ復帰も考えないわけではなかった彼女の神経を逆なでしてしまいました。
いよいよこれ以上休むと留年は確定という状況で、彼女の親と教師を交えた、懇談会を行うことになりました。結果的に最後になった懇談会の場に、彼女はゴスロリのファッションとメイクをして現れました。親も学校の対応には疑問を感じていたのですが、娘の恰好を見て「あ、もう戻る気ないな」と思ったそうです。その後彼女は退学し、紆余曲折ありましたが、自分で高校と専門学校を探し出して卒業して、現在は靴関係の仕事についているそうです。
この話を聞いて筆者は思ったのですが「彼女にとってゴスロリ・ファッションは戦闘服のようなものだったんだな」と思いました。

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local_offerevent_note 2021年4月16日
  • スピノザ

    フィットボクシングでダイエットしてます