電脳と蒸気と生ける屍のはざまで(3)

イヴェントとハプニング

「首都圏清掃整理促進運動」の様子
【画像引用 アートスケープ】
1960年代から、美術や音楽などの複数のジャンルにおいて、演劇的要素の強い作品が作られるようになりました。それらは「イヴェント」や「ハプニング」や「パフォーマンス」と呼ばれました。
美術分野ではドット画で有名な草間彌生(1920~)がニューヨークの街頭において性的なモチーフを扱った作品を提示し、ハイレッドセンター(メンバー:高松次郎(1936~98)、赤瀬川原平(1937~2014)、中西夏之(1935~2016))によって行われた首都圏清掃整理促進運動(1964)や、フルクサス(1962~、メンバーは不特定)による複数のイヴェントが行われました。
音楽分野ではジョン・ケージ(1912~92)によって図形楽譜や不確定な要素を含んだシアター的作品、小杉武久(1938~2018)や刀根康尚(1935~)や塩見 允枝子(1938~)による電子メディアを使った即興演奏、などが行われました。
これらの活動は芸術だけではなく、他の文化・思想・政治運動にまで影響を与えました

小杉武久
【画像引用 虹のキャラバンサライ】

雑踏と踏切のカノン

「タージマハル旅行団」(1969~)
【画像引用 いっかい】

現在はあまりこういったパフォーマンスが見られることが少なくなりましたが、筆者が高校生だった1970年代の頃は、こういったパフォーマンスはかなり行われており、私が在住していた関西圏でも、芦屋ルナ・ホールや、兵庫県立近代美術館(現兵庫県立美術館)などで行われており、たびたび観る機会がありました。

いろいろと観ているうちに自分でもやってみたくなり、当時の知り合いの画廊を借りて行うことになりました。
まずカセットテープレコーダーに、雑踏や踏切の音を取り、それを小型のシンセサイザーを使って音色を変調させました。この音を基にしてカセットテープを2本作り、2台のカセットテープレコーダーに同時に鳴らしました。またこの音と並行して、ポータブルのレコードプレーヤーやオープンリールテープレコーダーに少し細工をして、ノイズが出るようにしました。また画廊にあったピアノを使い、ある法則に基づいて「不思議の国のアリス」を「楽譜」にして、即興的に演奏しました。これらの要素を1時間あまりに渡って行いました。私の意図は、これらの互いに関係のない音響がぶつかり合って、カオス状態になることを目指したのでした。
ピアノを習ったことはなかったので、少々演奏には苦労しましたが、想像以上に混沌とした様子になり、割と満足した出来になりました。「演奏会」には中学時代の同級生も来て、いろいろな感想を聞くことができました。終了後画廊のオーナーから、この活動を継続することを勧められましたが、この当時私の興味は社会的な活動に向いていたので、そちらに進むことはありませんでした。
大学に行くようになって画廊との関係は途切れました。ある時数年ぶりに行ってみると、画廊はなくなっており、おしゃれな喫茶店になっていました。あのまま芸術分野に進んでよかったのではないかと思うこともありましたが、そこまでの才能はないように思ったので、その後の選択は間違ってなかったと思います。とは言うものの、もう一度をやってみたいなと思う今日この頃です。

ブログランキング・にほんブログ村へ
local_offerevent_note 2021年4月20日
  • スピノザ

    フィットボクシングでダイエットしてます