つれづれ(3)

アニメ「中二病でも恋がしたい!」(2012)

【画像引用 みんカラ】
今回の「つれづれ」は最近観た、アニメ・美術・ドキュメンタリー映画について書こうと思います。
アニメ「中二病でも恋がしたい!」は虎虎(詳細不明)原作のライトノベル(2011~2017)に基づいたアニメ作品です。
5月のゴールデンウイーク中、CS放送でアニメ作品がまとめて放送されていて、好きな声優が出ていたのと、京アニ(*1)作品ということで、録画したものを少しずつ観ました。タイトルからしてよくあるラブコメ作品かと思って観始めたのですが、ストーリーが進むにつれて、その内容に引き込まれていきました・
物語はとある地方の高校を舞台に、いわゆる「中二病」(*2)のため、自らをファンタジー作品の「邪王真眼の使い手」と名乗る少女と、過去に「ダークフレイムマスター」と名乗り、「中二病」であったことを恥じている少年の、いわゆるボーイ・ミーツ・ガールの物語です。
物語序盤はコメディタッチの作品でしたが、話が進むにつれて少女の「中二病」が、早くに亡くなった父親の死が受け入れられず、そこからの逃避であることが判ってきます。また少年や彼らの周りにいる友人たちも、家族との関係や、思春期の自尊心と劣等感がないまぜになった気持ちを、解決できないまま生きていることが少しずつに明らかになっていきます。
よく「子供のような大人」とか「大人になりきれない大人」といった表現が使われることがあります。しかし私は思うのですが「子供のような大人」はあくまで「大人」であって「子供」ではありません。私たちは年齢が経てば、いやでも「大人」になってしまうのです。でもそれは多くの人にとって大きな痛みや代償を伴うものなのかも知れません。時に「大人」になることを拒否し死を選ぶ人が多くいることが、この現実の辛さを物語っているように思えます。
この物語の登場人物はその現実を知っていて、それでも自分を保とうと必死で生きています。物語の終盤、ある少女が別の少年から「いつまでも中二病ではいられない」と言われたとき「そんなことは最初から判っている!」と泣きながら言い放つシーンには心が打たれました。
しかしアニメはそこからこちらの予想を裏切った展開を見せます。彼らは一様につらい現実を受け入れながら、「中二病」を「卒業」せず、自身の強さも弱さも背負った「中二病」と共に生きていく道を選びます。これはこの時代の生きづらさに対する、あるひとつの答えのような気がしました。私はこの展開に心打たれました。自らは顧みて未だに「大人」と自信を持って言い切れない自分を鼓舞されているように思え、いろいろな思いと共に気がついたら、ボロ泣き状態でした(笑)。
同じような思いを持った人も多かったようで、アニメはシーズン2まで作られ、劇場版も2本作られました。

【画像引用 旧あにまん!】

「私のマル 小野田實展」(姫路市立美術館)

「WORK70‐11」(1970)
【画像引用 美術手帳】
先日姫路市立美術館で開催されている「私のマル 小野田實展」(2021.4.10~6.20)を観てきました。小野田實(1937~2008)は満州に生まれ、その後姫路に移り、終生姫路を拠点に活躍した芸術家です。
最初は写実的な油絵を描いていましたが、戦後の前衛芸術の動向を受け、次第に抽象的な画風に変わって行きました。
1960年代は等高線のような線分に、中間色の点描を打つような作品でした。70年代に入って等高線から形態が同心円に変わっていきました。この事態は多分に空間恐怖症的な余白のない書き込みが多く、また曼荼羅を連想させるような感覚でした。しかし1980年代から点描は影を潜め、次第に原色で明快な形態を持った作風に変化していきました。
彼は戦後の前衛芸術の動向から出発しましたが、次第にそれに飽き足らなくなり、現代の機械的な消耗品のような人間存在を、繰り返される「マル」のメタファーを通して、描くようになりました。
一時は「具体美術協会」(*3)に関わっていたこともありましたが、基本的にはあまり党派を組まず、孤独な創作に没頭し続けました。
私はこの展覧会で小野田實の存在を初めて知ったのですが、ひとめで気にいってしまいました。初期の点描作品も、後期の明快な作品もそれぞれに個性的です。こういった埋もれた作家を掘り起こした、姫路市立美術館の取り組みを、今後も続けていってほしいと思いました。

「WORK77-BLUE112」(1977)
【画像引用 ARTALK】

映画「SNS-少女たちの10日間」(2020)

【画像引用 映画HP】
映画「SNS」は2020年作のチェコのドキュメンタリー映画で、パーラ・ハルボヴァーとヴィート・クルサーク(いずれも生年不明)の共同監督で製作されたものです。この映画は公開前から話題になっていた作品で、筆者も公開されてすぐに観に行きました。
映画はオーディションで3名の成人女性を選び(1名のみ演技経験あり)、年齢を12歳と偽り、スタジオ内に子供部屋を作り、架空のアカウントを作成します。SNS上ではそれぞれの判断に基づいた行動しますが、制限ルールとして
①自分からは連絡しない
②12歳であることをハッキリ告げる
③誘惑や挑発はしない
④露骨な性的指示は断る
⑤何度も頼まれた時のみ裸の写真(偽の合成写真)を送る
⑥こちらから会う約束を持ちかけない
⑦撮影中は現場にいる精神科医や弁護士などに相談する
が課せられました。
サイトの開始から10日間で2458人がコンタクトしてきましたが、同年代や女性のコンタクトはほぼ皆無で、23歳~63歳の男性ばかりでした。しかも彼らの大半は性的な行動を女性たちに要求します。あからさまな性的言動を行ったり、スカイプで自慰行為を見せつけたり、裸の写真の要求を一様に行っていました。男性にはモザイクがかけられていましたが、目と口の部分にはモザイクをかけておらず、おそらく知人が見れば認識できるようにしてありました。
私は結構ホラー系の映画が好きで、「エグい」内容には耐性があると思っていました。しかしそれらはしょせん「作り物」でしかなく、あまりにも赤裸々な内容に、正直「吐き気」さえ覚えました。私も普通に性的な欲求は持っていますが、これはそういうものではなく、年端もいかない女性に対して「征服欲」や「支配欲」を満たすものでしかありませんでした。
映画は最後にこの映像を証拠として、チェコの警察に渡し、それに基づいて捜査が行われました。この映画の圧巻は、特に悪質なコンタクトを行ってきた男性に対して直接対決をせまるシーンでした。驚くべきことにこの男性は子供のためのキャンプリーダーなど、福祉的な援助を行っていることでした。
証拠を突きつけられても彼は自分の非を認めず、「SNSをやっている子供が悪い」「親が悪い」「社会が悪いと」と責任転嫁を続け、最後に「もっと取り上げるべき問題がある」といって、人種ヘイト発言まで行っていました。
この映画は、当初日本でもノーカット版で上映するつもりだったようですが、それだとどうしてもR18指定になるため、元の映画にはないモザイクをさらにかけることでようやくR15指定で上映されることになりました。そしてそれはこの映画の主体というべき12歳の子供には観られないということでもありました。
正直、お勧めするかどうかというとかなり複雑なものがあります。なんらかの性的被害の経験のある人にとっては、かなり辛い内容だともいます。しかしだからこそこの映画は多くの人に観てもらいたいと、やはり思います。


【画像引用 FMNLN】

*1 京アニ
(株)京都アニメーション
京アニ事件
*2 中二病
中二病
*3 具体美術協会
具体美術協会

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local_offerevent_note 2021年6月15日
  • スピノザ

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