仏陀とフェルメール~美術番組紹介

テレビ見仏記

【画像引用 TCエンタテインメント】
今回の記事は、美術に関するふたつのコンテンツを紹介するものです。
最初に紹介するのは「テレビ見仏記」(2001~)です。この番組の基になった書籍「見仏記」(1992~)は、中央公論社や角川書店などで雑誌連載の後に書籍としてまとめられたものです。内容はみうらじゅん(1958~)といとうせいこう(1961~)のふたりが、これまでの美術・宗教的な考察とは異なった視点で仏像を「見仏」するものです。
みうらじゅんは、祖父の影響もあり、小学生の頃から歴史や仏像に興味を持っていました。みうらによると、敬虔な気持ちからの興味ではなく、阿修羅像に怪獣を、観音像のアルカイックスマイルにウルトラマンの顔を、映し出して見ていたそうです。またみうらの住む京都は様々な歴史的遺産があり、そういったものを身近に感じながら生活をしていました。しかし上京してイラストや文筆の仕事に関わる中で、次第にこれらの興味から遠ざかっていきました。しかし祖父が亡くなった時に、みうらに歴史に関する本を残し、そこから再び仏像に興味を持つようになりました。
最初はあくまで趣味のレベルでの興味だったのですが、編集者との話の中で、記事にしたら良いのではと思い、雑誌「中央公論」で連載を始めました。この際に昔からの友人であるいとうせいこうと共に記事を書くことになりました。当初はその独特な内容や、「見仏」という表記などが仏教界から好ましく思われていませんでしたが、この記事を読んで仏教や仏像に興味を持ち、その流れで参拝する人が増えるに従い、仏教界も好意的に捉えるようになりました。
この書籍の人気を受けて、「見仏記」のテレビ版「テレビ見仏記」が放送されることになりました。内容は書籍の内容に基づき、みうらといとうのふたりが全国をまたにかけて「見仏」するものです。関西テレビ(カンテレ)で不定期で放送されました。近年は新作の放送が少なくなりましたが、過去の放送が少しづつブルーレイやDVDで発売されいます。ひと頃はCSで再放送を観ることができましたが、最近はそれもなくなりました。
番組は、みうらじゅんといとうせいこうのふたりが、各地にあるお寺に参って様々な仏像を「見仏」するものです。仏像を様々なものに例えたり軽い下ネタが入るなどラフな展開が見どころですが、ふたりの仏像に対する知識はかなり専門的で、ひとめ見て仏像のタイプを当て、案内をしてくれる僧侶ともかなり突っ込んだ話をします。取り上げられるお寺は有名なところだけではなく、地方の小さな寺の重要な仏像を紹介したりします。また一般に公開されることの少ない「秘仏」を特別に番組で紹介されることも多く、仏像好きには垂涎の内容です。
番組では地元の名所の紹介や、ご当地スイーツの紹介もあり、なかなかバラエティに富んだ内容です。配信等で観ることが出来ますので、よろしければ観て下さい。

山田五郎オトナの教養講座

【画像引用 OC】
次に紹介するのはYouTubeで不定期に配信されている美術番組「山田五郎のオトナの教養講座」(2021~)です。番組に出演する山田五郎(1958~)は、多彩なジャンルの博学な知識を、面白おかしく紹介する奇才です。その中でも専門である西洋美術史に関しては、かなり高度な専門知識を持っています。美術系の勉強を長年続けていましたが、そちらの職業に就くのはなかなか難しく、出版社で雑誌の編集に携わっていました。その後雑誌でエッセイを書くようになり、その博学さが評判となり、TVのバラエティ番組に出るようになりました。上記のみうらじゅんとレギュラー番組を行っていたこともありましたが、ふたりの「知識と教養に裏付けられたサブカル系下ネタ番組」が評判を呼びました。そして専門である「真面目な」美術系の書籍の執筆や、TV番組に出演することが多くなりました。
この配信の基になったのは、BS日テレで現在も放送されている「ぶらぶら美術・博物館」(2010~)という番組です。この番組は山田五郎と、タレントのおぎやはぎ、モデルの高橋マリ子によって全国各地の美術館や博物館の企画展を紹介するものです(2010~)。これもなかなか面白い内容ですが、TV番組の都合上あまり専門的に突っ込んだ内容は難しく、もう少し専門的な内容が出来ないものかと山田五郎が考え、選んだ媒体がYouTubeでした。
内容は山田五郎が専門とする、西洋美術に関するものが多いのですが、日本の西洋絵画や、日本画についても触れています。配信の制作にあたって「ぶらぶら美術・博物館」のスタッフが協力しています。
番組の構成は、スタッフの「ワダさん」(女性、顔出し・本名NG、24歳)が毎回、美術作品一点と、それを選んだ理由について最初に述べて、それを引きとって山田五郎が詳しい解説をするというものです。なのですがこのワダさんがなかなかの人で、美術の知識が皆無なだけでなく、一般常識もおぼつかない様子で、毎回ワダさんと山田五郎のやり取りが笑えます。山田五郎の解説は専門的でありますが、かなり嚙み砕いて話すため非常に判りやすい内容です。また作品の紹介だけでなく、歴史的な背景や、画家のプライベートなども紹介し、とても楽しめる内容です。また一般的な通説を紹介しつつ、時にかなり突っ込んだ独自解釈も話され、特にこのあたりの内容が、筆者には刺激的です。
当初は月1回程度の配信でしたが、現在は週1回程度の配信を行っており、視聴者からの希望も取り入れバラエティにとんだ内容になっています。現在登録者数は20万人を超えており、このような内容の配信としては、異例の人気を誇っています。また近現代の作家で、番組で絵を紹介すると、高額の著作権料を請求されるケースがあり(特にピカソがそうです)、ねん出するために視聴者からクラウドファンディングでお金を集めたこともありました。
著名な画家の意外な一面や、一般にはあまり知られていない優れた画家を紹介するなど、毎回飽きさせない内容です。現在YouTubeチャンネルが開設されており、過去のすべての配信を観ることが出来るので、興味のある方はぜひ観てください。

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local_offerevent_note 2022年11月25日
  • スピノザ

    フィットボクシングでダイエットしてます