「メイド・イン・アビス」の世界

はじめに

旅の始まり

ナナチとの出会い

ガンジャ隊とイルミューイ

ワズキャン
【画像引用　個人ブログ】

ワズキャン（なれはて）
【画像引用　個人ブログ】
物語は過去に遡ります。どの程度の過去かは明言されませんが、数百年単位であることが伺われます。ガンジャ隊と呼ばれる調査隊がアビスに降り立ちました。彼らはいずれも訳ありの過去を抱えており、住んでいた場所から逃げだした存在でした。
彼らはアビスに住むイルミューイ（女性）に出会います。彼女は探掘隊のひとりであるヴェコと親しくなります。しかしアビスの底では「水もどき」と呼ばれる感染症が流行っており、探掘隊の全ての隊員とイルミューイが感染してしまいます。水もどきは嘔吐と下痢を繰り返しながら、緩慢な死に至ります。このさなかイルミューイは生命力を持たない子どもを産み続けます。彼女は産まれるたびに死んでしまう子どもに心を打たれ、涙を流し続けます。
リーダーのワズキャン（男性）はこの亡くなった子どもを食べることで、水もどきが完治することに気づき、そのことを皆に伝えずにスープにしたものを飲ませます。水もどきは完治するのですが、そのことを知った隊員たちは、深い悔恨に襲わます。
しかし隊員たちは次第にモンスター化し「なれはて」と呼ばれる存在になります。またイルミューイは次第に意識とことばを失い、巨大化していきます。そして彼女がその存在の中心となる「なれはて村」が誕生します。イルミューイは遺物「欲望の揺籠」によって、強い生命力を持った最後のこどもファプタ（女性？）を産み出します。

イルミューイ
【画像引用　ANIMA】

イルミューイ（なれはて）
【画像引用　アニメつぶやき速報！！】

ファプタの闘い

ファプタ
【画像引用　個人ブログ】
ファプタは自分の母を追い込み、産まれたこどもを食べ続けた村人のことを強く恨んでいました。ファプタは母の解放と村人への復讐を願っていました。村人たちは過去のいきさつからファプタの想いを受け止めており、「なれはての姫」と呼び信仰の対象に近い存在でした。しかし村には結界の様なものが存在しており、村人は村から出ることが出来ず、逆にファプタは村の中に入ることができません。成れ果て村の住人たちは、自分たちが再び人間に戻ることがかなわないと知っているため、この地に自分たちの骨をうずめる覚悟で暮らしています。
この村にリコたちが辿り着きます。村のいきさつをヴェコから詳しく聞き、この村にしばし留まることになりました。村は自給自足で生活が行われていましたが。この村ではものを売り買いするためには、その人の持つ「価値」を渡さないといけません。「価値」は人によって違うのですが、自分の肉体の一部を渡さないといけない場合が多く見られました。
村の外でレグはファプタと出会います。ファプタはレグを知っており、過去にした約束を果たしてほしいと言われます。しかし過去の記憶を失っているレグは、ファプタの存在さえ憶えていませんでした。
そういった中で、ナナチはベラフという人物と出会い、そこで亡くなったはずのミーティと出会います。ベラフによって複製されたもうひとりのミーティでした。ミーティはベラフの結界の中でのみ生きることが出来る存在で、ナナチは旅をやめて、その地に自分の安息を求めようとします。
レグは村の外で数多くのけものたちと闘うのですが、闘いの中で使った火葬砲によって、村の結界は破られ、けものたちは村の中に入り村人を襲いだします。またファプタも侵入が可能になり、復讐に燃えて村に乗り込んでいきます。

ベラフ
【画像引用　個人ブログ】、

ベラフ（成れ果て）
【画像引用　pinterest】

烈日の黄金郷

ヴェゴ
【画像引用　ワードプレス】
成れ果て村に乗り込んだファプタは村人たちを惨殺していきます。またけものたちも村人を襲います。レグはけものたちと闘いながら、同時にファプタとも闘うことになります。
そのころナナチはミーティーと安らぎの世界に浸り、全てを忘れようとしていました。しかし村での騒ぎを知り、ナナチの心を揺さぶります。ナナチはコピーとはいえミーティーの存在を無視できません。しかもベラフからこの結界を抜け出せば、ミーティーは消滅してしまうと告げます。ナナチは苦悶しますが、仲間のもとに戻ることを選択し、またミーティーを置いていけないため、消滅を覚悟でミーティーを連れ出します。以前は自分の力ではミーティーを消滅させることが出来ないと言ったナナチですが、今度は自分の責任でミーティーを連れ出す決断をします。これまでの思い出を語りながら、流れる涙を拭うこともなく、ナナチはミーティーを結界の外に連れ出し、その存在を消滅させます。
闘いの中でファプタを力を失って倒れます。しかし村人たちはファプタに自分たちを食べさせることで、ファプタに力を取り戻させます。それは村人にとっては贖罪の気持ちの表れでもありました。ファプタは村人たちを食べ、けものたちと闘います。またレグも参戦し、けものたちと最後の闘いをします。
ふたりの尽力により、村に入ってきたけものたちを倒します。残った村人はリコたちを村の外に脱出させることにします。闘いの中で力尽きたワズキャンはリコに「ここに来て君は良かったのかい」と尋ねます、それに対してリコは「メチャクチャ来てよかった」「私、奈落の底を目指したりせずに地上でずっと暮らしてたら、きっと思いもしなかった。呪いの満ちた絶界に、こんな場所があるってこと。こんな素敵な人達がいるってこと。だから、ここに来れてホントによかった！」と答えます。それを聞いてワズキャンは最後に「望郷を…望郷を旅の先に持つ、奈落の子供達。叶わない夢より恐ろしいものが、黄金の先で待つ。せめて夢を叶えて、絶望しておくれ」と言って消滅します。またヴェゴも力尽きる寸前に、イルミューイにしたことを謝ると同時に、あなたの母は決して不幸せではなかったとことづけて亡くなります。リコたちは村人とともに、村の外に脱出しますが、結界の外に出たため、残った村人も消滅し、成れ果て村はなくなりました。最後にリコたちは私たちの旅についてこないか問いかけますが、少し考えてさせてほしいと言います。リコたちは次の旅に進むところで、物語はいったん幕を閉じます。

パッコヤン
【画像引用　個人ブログ】

旅はまだ続く

声優：ナナチ（井澤詩織）リコ（富田実憂）レグ（伊藤茉莉也）
【画像引用　アニメイトタイムズ】
文中でも触れましたが、第1期を最初に観たときは、正直それほど強い印象を受けませんでした。しかしボンドルド編で、ナナチとミーティーが受けた仕打ち、娘さえ道具のひとつとしか見なさない姿勢といった、ボンドルドの酷薄さに強い印象を受けました。それとこの作品を大きく特徴ずける要素として、食事と排せつの描き方です。あまり美味しそうには見えない食事の描き方もそうですが、なんといっても死産した赤子を食らうというシチュエーションが強烈でしたた。また排泄に関するシーンがリアルで、失便、失禁、嘔吐が当たり前のように描かれていました。それは単に残酷なだけでなく、この物語の核心的なテーマである、「死と再生」の具現化なのだと思います。
またナナチとミーティ、イルミューイとファプタの関係性の描き方が、単に愛情と言う言葉だけでは表現しづらい強い執着性が描かれ、愛情が持ってしまう独善性が描かれていました。またボンドルドやワズキャンが、単なる悪役ではなく、信念に基づいた行動が結果的に悲惨な情況を招いてしまう様子がていねいに描かれていました。しかしそれ以上に強い印象を受けたのが、最後になれはて村の村人がファプタに自分たちの命を捧げるシーンです。贖罪ということばだけでは片付かない激しさを感じました。
この描写に筆者は宮沢賢治に通じるものを感じました。作者が宮沢賢治の影響を受けているのかは定かではありませんが、人間が生きることの残酷さを描きながら、それを断罪するのではなく、やむを得ない「罪」として描いていることに大きなつながりを感じました。
最後にこの作品は作画、音楽、声優の演技、など丁寧に作りこまれた内容で、アニメ作品として優れたものでした。とにかく後半以降の展開に強く心を打たれ、いつもボロ泣き状態で観ていました。今回の記事のため改めて最終回を観たのですが、やはりボロ泣きになってしまいました。直接的な残酷シーンはあまりないのですが、むしろ精神的に辛くなる展開が多く、かなり観る人を選ぶ作品ではあります。しかし観れば強い感動を与えてくれるので、ブルーレイや配信で観ることが出来ますので、興味のある方はぜひ観てください。また放送時期は未定ですが、今から第3期が楽しみです。

「Endless Embrace」（第2期EDテーマ）