私の好きな特撮ソング10選(3)

「死神の子守唄」~「怪奇大作戦」(1968~9)


作詞:佐々木守、作曲:玉木宏樹、歌:深山ユリ
「怪奇大作戦」は円谷プロ制作の番組です。人知を超えた不可思議な事件を「SRI」(Science Research Institute、科学捜査研究所)が科学の力を使って解決する物語です。
この時代の特撮映画は怪獣物が主流でしたが、この作品は事件を人間が解決するという、少し大人向きの内容が新鮮で、私も子供時代好んで観ていました。特に実相寺昭雄(1937~2006)演出作品が秀逸で、今観てもその新しさに打たれます。「死神の子守歌」はその実相寺演出作品である第5話「死神の子守歌」の劇中歌です。歌の内容に従って、次々と女性が「冷凍化」されて死んでいきます。最後に明かされる真実が悲劇的な秀作です。
佐々木守(1936~2006)は本作の脚本家、玉木宏樹(1943~2012)クラシック系の作曲家、深山ユリ(生年不明~2012)は劇中で歌っている俳優です。恐ろしい歌詞と物悲しいメロディーが印象に残る曲です。

「妖怪大作戦」~「河童の三平 妖怪大作戦」(1968~9)


歌:ヤング・フレッシュ、作詞: 掛札昌裕、作曲:小林亜星
「河童の三平 妖怪大作戦」は水木しげる(1922~2015)原作による作品です。妖怪の祟りで消息を絶った母親を、主人公の少年が妖怪と闘いながら探す内容です。子ども時代も観ていたのですがあまり憶えておらず、大人になってからあらためて観ました。おそらく昭和30年代に流行った、映画の「母もの」の影響が強いように思えます。そのためか若干脚本が古く感じられますが、妖怪の造形はモノクロ作品と言うこともあってか、なかなかよく出来ています。
「妖怪大作戦」は本作の主題歌です。掛札昌裕(1938~)は本作の脚本家、小林亜星(1933~2022)は著名な作曲家、ヤング・フレッシュはコーラスグループです。いかにも昭和という感じの少しとぼけた曲です。

「故郷は地球」~「シルバー仮面」(1971~2)


作詞:佐々木守、作曲:猪俣公章、歌:柴俊夫・ハニー・ナイツ
「シルバー仮面」は宇宙人との闘う兄弟の物語です。宇宙に飛び立てる光子ロケットを開発した春日博士は設計図を奪おうとした宇宙人によって殺害されます。博士の遺志を継いだ春日兄弟は光子ロケットを開発するため、父の協力者を探して旅に出ます。しかし光子ロケットを狙ったり、地球人が宇宙に進出することに脅威を感じる宇宙人に追われることなります。また宇宙人との戦いに巻き込まれることを嫌う人間たちによって迫害されることになります。そして兄弟のひとりが博士のシルバー仮面に変身する力を与えていたのです。
この作品も上記の実相寺昭雄によってプロデュースされた作品です。全体に画面が暗めで、内容も同じ地球人からの迫害が描かれるなど、かなり重ための内容でした。放送当時裏番組に「ミラーマン」(1971~2)に視聴率競争で後れを取り(今観ると「ミラーマン」もあまり明るい内容ではないのですが)、そのためにテコ入れとして、等身大だったシルバー仮面を巨大化させるのですが、それにより視聴率が伸び、打ち切りにはならず全26話で終わりました。そういうこともあってあまり知られていない作品でしたが、その後隠れた名作として再評価されるようになり、2006年に実相寺昭雄監督により「シルバー假面」のタイトルでリメイク版が作られました。
筆者もリアルタイムで観ていたのですが、あまり内容を憶えておらず、後年に改めて観た際にその先進性と、「昭和臭さ」に感慨を受けました。
佐々木守は上記、猪俣公章は(1938~93)は著名な作曲家、柴俊夫(1947~)はシルバー仮面を演じる俳優、ハニー・ナイツは(1958~)は男性コーラスグループです。昭和っぽい勇壮な曲です。

「宇宙猿人ゴリなのだ」~「宇宙猿人ゴリ」(1971~2)


作詞:雨宮雄児、作曲:宮内國郎、歌:ハニー・ナイツ・スタジオ・オーケストラ、セリフ:小林清志
「宇宙猿人ゴリ」(タイトルが第21話で「宇宙猿人ゴリ対スペクトルマン」、第40話で「スペクトルマン」と変わりますが)は地球への侵略をもくろむ科学者ゴリとその部下ラーと、ネビュラ星のサイボーグ・エージェントであるスペクトルマンとの闘いを描いた作品です。作品はこの時代の大きな問題であった公害をテーマにしており、スペクトルマンと共に闘う組織も「公害Gメン」名付けられていました(途中で「怪獣Gメン」に変わりますが)。
ゴリが作り出した怪獣も公害をモチーフにしたものが多く、ヘドロ、ゴキブリ、産業廃棄物などが怪獣化されました。また小説「アルジャーノンに花束を」(1966)のリスペクト作品なども作られました。タイトルの変更に伴って公害モチーフの怪獣は次第に減っていきました。しかし社会的なテーマは最後では変わらず、スペクトルマンがネビュラ星の非情な命令に苦悩する場面も度々描かれました。この作品は高い視聴率を誇り、「第二次怪獣ブーム」の牽引的な作品になりました。
紹介する曲はエンディング曲です。雨宮雄児は詳細不明、宮内國郎(1932~2006)は著名な作曲家、ハニー・ナイツは上記、小林清志は(1933~2022)は、アニメ「ルパン三世」の次元大介役で有名な声優で、物語前半でゴリの吹き替えもやっています。曲の3番の
「自分の理想と目的持って強く生きてる そのはずなのに
宇宙の敵だといわれると身震いする程腹が立つ」
という歌詞がすごく感情的で笑わせます。これも昭和っぽい力強い曲です。

「風よ光よ」~「快傑ライオン丸」(1972~3)


作詞:しのだとみお 、作曲:小林亜星、歌:秀夕木・ヤング・フレッシュ
「快傑ライオン丸」は特撮時代劇作品です。大魔王ゴースンと闘うため、3人の剣士が立ち上がります。主人公役の潮哲也(1949~)は、女剣士役の九条亜希子(生年不明)と共演がきっかけで結婚しました。この作品と「変身忍者嵐」(1972~3)が当時の2大特撮時代劇で、筆者はどちらも観ていました。ただこちらの作品の方が、より時代劇らしい作品だったように思います。好評のため続編として「風雲ライオン丸」(1973)が作られ、また舞台を現代に移したリメイク版「ライオン丸G」(2006)が作られました。
しのだとみおはプロデューサーの篠原茂(1937~)の別名、小林亜星(1932~2021)は著名な作曲家、秀夕木(1940~98)は歌手、ヤング・フレッシュは上記の通りです。勇壮な曲です。

「地獄のズバット」~「快傑ズバット」(1977)


作詞:石森章太郎、作曲:京建輔、歌:水木一郎
「快傑ズバット」は特撮ヒーロー作品です。親友の科学者を謎の組織に殺された主人公が、親友の残した宇宙探検用強化服「ズバットスーツ」(着用時間は5分以内)を着けて、謎の組織を倒すために旅に出ます。
特撮作品というより、特撮作品のパロディの様な内容で、また日活アクション映画のテイストも持っています。毎回闘う敵の刺客が必ずなにかひとつの特技を持っています。最初は居合切りや早打ちと言った技を使うのですが、次第にネタがなくなったのか、料理・テニス・ダイス振りといったあまり戦闘に役に立ちそうにない技が出てきます。
刺客は必ず自分の技が日本一であることを誇るのですが、それに対して毎回ズバットが「お前は日本で2番目だ」と言い、「じゃあ日本一は誰だ!」と聞かれると、舌打ちと口笛の後「オレさ」と言って、刺客以上の技を見せるのが毎回のお約束になっています。
武器として空を飛べる車ズバッカー操り、敵を倒すためにムチでシバきまくります。
放送当時はあまり意識して観ていなかったのですが、大人になって観るようになって、あまりのバカバカしさに好きになってしまいました。どちらかというと大人にこそ観てほしい作品です。
石ノ森章太郎は(1938~93)原作者の著名なマンガ家、京建輔(1937~)は作曲家、水木一郎(1948~2022)アニキは先年惜しくも亡くなった(泣)著名なアニソン・特撮歌手です。イントロに筑前琵琶が使われるかなり斬新な曲です。

「キューティーハニー」~ドラマ版「キューティーハニーTHE LIVE」(2007~8)


作詞:クロードQ、作曲:渡辺岳夫、歌:ワイルド三人娘
「キューティーハニーTHE LIVE」は永井豪(1945~)原作による特撮作品です。アニメ作品が数多く作られましたが、実写作品として劇場版(2004)とドラマ版も作られました。ドラマ版はマンガ原作に基づいて作られていますが、キューティー戦士が3人いるなどの、オリジナル要素も盛り込まれています。
主人公の女性如月ハニーが悪の組織パンサークローと闘う物語ですが、3人のキューティ戦士が、常に味方同士とは限らない内容になっています。特撮はなかなか本格的で、俳優の身体能力と相まって、なかなか魅せる内容です。如月ハニーが天真爛漫な性格になってはいますが、キューティー戦士はそれぞれ闇を抱えており、脚本的にもよく出来た作品です。またパンサークローの幹部の性格描写も秀逸で、結構トンでもな武器が笑わせます。
クロードQはクリエイティブ・ディレクター岩崎富士男(1937~2016)の別名、渡辺岳夫(1933~89)は著名な作曲家、ワイルド3人娘は声優の栗林みなみ(1976~)、谷山紀章(1975)、じょいマックス(ゲーム会社の広報担当者、生年不明)の3人によって作られたユニットです。例の主題歌ですが、アレンジがかなり新しくなっています。

「妖怪人間ベム」~ドラマ版「妖怪人間ベム」(2011)


作詞:アサツーディ・ケイ、作曲:田中正史、歌:ベム、ベラ、ベロ (亀梨和也・杏・鈴木福)
ドラマ版「妖怪人間ベム」は、有名なアニメ作品(1968)の実写版です。
物語は科学者によって作られた妖怪人間が、人間になることを望み、旅を続けながら悪を退治していくものです。アニメ版のリメイク作品ですが、妖怪人間に協力する人間がいたり、彼らを作った科学者の存在が描かれるなど、オリジナル要素も盛り込まれています。
また妖怪人間の苦悩や、人間側の戸惑いなども描かれ、アニメ版に比べて大人向きの内容になっています。放送は高視聴率を取り、それに答える形で劇場版(2012)も作られました。筆者は劇場版ともども家族と一緒に観ていましたが、俳優の演技の良さも相まって、感動的な内容のドラマでした。
アサツーディ・ケイは広告代理店の名称、田中正史(1928~2010)は作曲家、亀梨和也(1986~)、杏(1986~)、鈴木福(2004~)は妖怪人間を演じている俳優です。アニメ版と同じく妖怪人間の心の叫びを歌った名曲です。

「泣いてもいいいんだよ」~「悪夢ちゃんThe 夢ovie」(2014)


作詞・作曲:中島みゆき、歌:ももいろクローバーZ
「悪夢ちゃんThe 夢ovie」はドラマ「悪夢ちゃん」(2012)の好評に答えた作られた劇場版です。
物語は悪夢で未来を予想する「明晰夢」の能力を持つ、少女の悩みを聴いた担任の女性教師が、最初はしぶしぶ関わっていたが、自身の過去を取り戻すなどして、次第に少女に寄り添って悩みを共に解決していこうとする。ある時彼女の存在を知った科学者が、夢を映像化するシステムを開発して、少女を使って自分の野心を実現しようとする。しかしそれによって彼らは様々な事件に巻き込まれるようになります。劇場版はドラマ版の続編で、これを持って物語は完結します。
これも親子ともどもドラマ版から観ていたのですが、少女役の木村真那月(2001~)と教師役の北川景子(1986~)の好演と相まって、なかなか見ごたえのあるドラマでした。また日本ではSFドラマは、内容的にグダグダになる場合が多いのですが、CG を駆使した映像と、SF的考証の確かさで観せてくれました。
中島みゆき(1952~)さまは著名なシンガーソングライター、ももいろクローバーZ(2011~)は著名なアイドルグループで、映画にも出演しています。ももクロZがまだ5人の時に歌われており、中島みゆきらしい若い人の応援ソングで「泣かせる」曲です。
父の日に配信されたPV(まだ無名な頃の滝藤賢一(1976~)の演技を観ることができます)と、中島みゆき自身が歌ったものもあるのでいずれも添付しておきます。
父の日ヴァージョン
中島みゆきヴァージョン

「我ら思う、故に我ら在り」~仮面ライダーゴースト(2015~6)


作詞・作曲:綾小路翔、歌:氣志團
「仮面ライダーゴースト」は平成ライダーシリーズ16番目の作品です。初回早々怪人に殺害された主人公が、仙人の力を借りて仮面ライダーゴーストに生まれ変わり、「眼魔世界」の敵と戦います。
ゴーストは過去に存在した英雄(一部フィクションの存在もいますが)の力を借りて様々なライダーに変身します。例えば宮本武蔵は剣の力、エジソンは電気の力、ロビン・フッドが矢の力、といった具合です。主人公は幼馴染の僧侶と女性と共に、「不可思議現象研究所」を作り、巷に存在する謎を依頼者の望みに従って解決していきます。物語は敵味方入り乱れながら進みますが、最後はハッピーエンドで終わる内容です。
筆者はリアルタイムで観ていたのですが、平成ライダーの中ではあまり人気がない作品だそうです。私は結構面白いと思っていたし、多少甘いところはありましたが、そこも含めて結構好きなライダーです。また仙人を演じる竹中直人(1956~)が、いつもの竹中直人なのが笑わせます。
綾小路翔(1976~)は氣志團のメインボーカル。氣志團(1997~)は著名なロックバンドです。とても元気の出る曲です。

番外「爆発だッ!タローマン」~「TAROMAN 岡本太郎式特撮活劇」(2022)


版権の関係でオリジナルはコピー出来ませんので、代わりに耳コピ版を載せておきます。
ことば:岡本太郎、作詞:藤井亮、作曲:林彰人、歌:タローマン合唱団
「TAROMAN 岡本太郎式特撮活劇」は岡本太郎を「素材」にした特撮活劇作品です。1回5分の内容で全10話が放送されました。物語はよく判らん怪獣が現れると、シュールレアリスム星からやってきたタローマンが、なんだかよく判らない闘いをします。タローマンの造形は太陽の塔、怪獣の造形は岡本太郎の作品の中から取られています。毎回のタイトルや劇中のセリフは、岡本太郎の言葉から取られています。この番組は同年に開催された「岡本太郎展」の共催作品として作られたもので、美術展においてもタローマンが紹介されていました(美術展に関しては別の記事で紹介しています)。
芸術の強度ー岡本太郎の場合
筆者はたまたまこの番組を見つけて観始めたのですが、あまりのバカバカしさに惹かれてしまいました。また。毎回怪獣との闘いが繰り広げられますが、怪獣の目的も攻撃手段もなんだかよく判らず、タローマンの攻撃もよく判らないものです。まさに「なんだこれは」です。最終回は信じられない終わり方をします。全体的に昭和テイストに貫かれており、画像も意図的に荒めに作らており、作中のアイテムや言葉遣いも昭和っぽいものになっています。NHKの配信で観ることが出来ますので、興味のある方は観てください。
藤井亮(1979~)は本作の監督(言葉は岡本太郎のものから取られています)、林彰人(生年不明)は音楽プロデューサー、タローマン合唱団は色々調べましたがよく判りません。男性コーラスグループなのは間違いないです。まさに「なんだこれは」な名曲です。

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local_offerevent_note 2023年1月20日
  • スピノザ

    フィットボクシングでダイエットしてます