特撮三昧(5)

「仮面ライダー THE WINTER MOVIE ガッチャード&ギーツ 最強ケミー★ガッチャ大作戦」(2023)

【画像引用 公式サイト】
この作品は仮面ライダーガッチャ―ド(2023~)と仮面ライダーギーツ(2022~3)を基にした劇場版です。監督は山口恭平(1981~)です。
錬金術によって生み出された101体の人口生命体ケミー。それが何者かによって封印を解かれました。再び封印すべく仮面ライダーガッチャ―ドとその仲間たちがケミーの捜索を続けています。ケミーはそのままの姿ではコントロール出来ない存在ですが、意思を持っており、心が通じればカードに回収され、その能力がライダーものになります。
ケミー捜索をしていくなかで最強のケミーであるクロスウィザードが現れ、仲間のふたりをケミー化したり、最強ケミーを10体繰り出すなどの行動を起こします。仮面ライダーギーツも参戦し闘いは混沌とした様子になりました。
いわゆるクロスオーヴァ―作品なのですが、それぞれの持ち味を生かした内容でした。またそれぞれのメンバーが共闘するのですが、TV版でのエピソードや、性格付けが反映されていました。しかしTV版を観ていなくても楽しめる内容です。劇中ヒロインがライダーに初めて変身するのですが、女性ライダーが2号ライダーになるのは今作が初めてだそうです。物語の最後にギーツそっくりのケミーの正体が明かされるのですが、筆者は思わず泣いてしまいました。ペットを飼ったことがある方なら共感できるエンドエピソードだったと思います。
作品の公開はすでに終わっていますが、配信等で観ることが可能なので、興味のある方は観てください。

「仮面ライダー555 20th パラダイス・リゲインド」(2024)

【画像引用 オリコンニュース】
この作品は「仮面ライダー555(ファイズ)」(2003~4)のリスペクト作品及び完結編的な内容の作品です。監督は田崎竜太(1964)で「仮面ライダー555」は平成ライダーシリーズの第4作に当たる作品です。謎の人間の姿をした生物オルフェノクと主人公の仮面ライダー555の闘いを描いた作品です。
この作品には新しい要素があり、ひとつはこれまでは基本的に変身者が決まっていたライダーが、この作品ではドライバー(本作でのベルトの名称)を装着すれば誰でもライダーになれることです(多少の適性はありますが)。またドライバーが3つあり装着者が交換可能で、オルフェノクがベルトを装着してライダーになる場合もありました。
また人間があるきっかけによってオルフェノクになるため、オルフェノクになっても人間であり続けようとする苦悩を抱えることになります。また人間側もオルフェノクを倒そうとする考えと、オルフェノクと人間が共存しようとする考え方に分かれています。オルフェノ側の何人かのメンバーが、オルフェノクであることを隠してスマートブレインという合法的な会社を作って陰謀をめぐらしていました。こういった幾つもの思いが交錯し、三つどもえ四つどもえの闘いになっていきます。
またキャスティング的にも、綾野剛(1982~)のデビュー作品であることや、染谷翔太(1992~)や、声優の悠木碧(1992~、当時は八武崎碧名義)が子役で出演していることが、ファンの間では有名です。こういった大人的テイストにあふれた作品ですが、ライダーが変身時に携帯電話に番号を入力して変身する(555は変身時の入力番号です)というギミックが子どもにも受けて、一時は中断も考えられていたシリーズを継続させる力になった作品でもありました。
この映画はその正統の続編です。20年の歳月がたちそれぞれの登場人物は自分の生活を築いています。ヒロインの女性はオルフェノクと共に、クリーニング店とラーメン店を経営しています。平和の生活を送っている彼らの元に、突然謎の勢力が襲ってきます。彼らは復活したスマートブレインで、亡くなったはずのオルフェノクが社長になっていました。しかもヒロインの味方であり、行方が知れなくなっていた主人公が、555に変身して彼らを襲ってきたのでした。
亡くなったはずの人物が生きていたり、ヒロインがとんでもないことになったりと、本編を引き継ぎつつ、新しい展開を見せました。劇場版ではいつもライダーの新しいフォームが出てくるのがお約束ですが、今作ではそれを踏まえつつあえてそれを裏切る展開を見せました。おそらくこの展開は本作のファンにとって、納得の出来るものだったと思います。
ネタバレ要素満載なのでこれ以上詳しくは書けないのですが、様々な伏線が回収され物語は大団円を迎えます。とても素敵なラストでした。
すでに公開は終わっていますが、配信等で観ることが可能なので、興味のある方は観てください。

「ゴジラ-1.0(ゴジラマイナス1)」(2023)

【画像引用 シネマカフェネット】
この作品はゴジラ生誕70周年記念と銘うって作られた作品で、国内で作られたゴジラ作品としては30作目にあたります。監督は山崎貴(1964~)です。
物語は小笠原諸島の大戸島(架空の島)で始まります。1945年敗戦まじかなこの島に一機の特攻機が着陸します。主人公の特攻隊員は機体に不具合があったと言いますが、整備士が見たところ故障は見られず、その発言を疑います。その夜、島の伝説で語り継がれる「呉爾羅(ゴジラ)」が現れます、身長15メートル余りのゴジラは基地を襲撃し、特攻隊員と整備士長をのぞく全員が殺害されます。この際整備士長から特攻隊員にたいして、特攻機の機関砲をゴジラに向かって撃てと言います。特攻隊員はコックピットには辿り着きますが、恐怖をあまり機関砲を撃つことが出来ませんでした。
物語は1947年の日本、焦土と化した東京で、特攻隊員は虚ろな気持ちで暮らしていました。ある日女の赤ちゃんを連れたひとりの女性に出会います。子どもは自分の子どもではなく、ある人から頼まれて預かっていたのです。特攻隊員はこの女性と共同生活を送ることになります。そこへ再びゴジラが現れます。ゴジラはビキニ環礁で行われた核実験の際に放射能を浴びて、身長50メートルに巨大化し、放射能を吐く怪獣になっていました。
監督の山崎貴は「ALWAYS 三丁目の夕日」(2005) のような昭和ノスタルジーを描いた作品で有名です。一方特撮に対する思いも強く「アルキメデスの大戦」(2019)では、戦艦大和が沈没するさまを、当時の様々なデータを駆使して、特撮を使って正確に再現して、なおかつ日本海軍の硬直した姿勢を描いていました。感情的に流れがちな反戦を、客観的に描いた秀作でした。
映画はカラー版とモノクロ版が上映されており、時間の関係と、モノクロのほうがゴジラらしさが出て良いのではと思い、モノクロ版を鑑賞しました。正直な気持ちを言うと「シン・ゴジラ」(2016)の後でゴジラ映画を作るのはかなりハードルが高いように思え(「シン・ゴジラ」以降のハリウッド版のゴジラ作品を観ましたが、それなりに良かったのですが、「シン・ゴジラ」と比べると物足りなさを感じていました)、期待と不安が入りまじった気持ちで、スクリーンに望みました。不安は全く杞憂でした、それどころか「シン・ゴジラ」とは全く違った方向性から、新しいゴジラ像を描き出しており、ゴジラ映画史に残る傑作だと思いました。
まず特撮の出来が素晴らしく、モノクロ版で観たことが正解だったと思えました。ゴジラ本体のデティールの作りこみ、敗戦後間際の東京の街並み、すさまじい破壊シーン、特にゴジラが放射能を吐くさいに、背びれが下のほうから少しづつ隆起しながら発光し、頭部に届いたところで一気に放射能を吐くさまは、感動さえ感じました。
ストーリーも、敗戦後の状況の中で、GHQの言いなりになって手を打つことで出来ない政府に代わって、旧軍関係者と科学者による民間組織がゴジラに対峙する展開も、戦後の世相を反映した内容でした。俳優陣の演技がいずれも秀逸で特攻隊員を演じた神木隆之介(1993~)マッドサイエンティスト的な科学者を演じた吉岡秀隆(1970~)、整備士の生き残りの青木崇高(1980~)、口は悪いが人情にたけた近所のおばちゃんの安藤サクラ(1986~)などの演技が物語を輝かせていました。その中でもヒロイン役の浜辺美波の演技が素晴らしく、小津安二郎の映画に出ていた原節子(1920~2015)のような、静かな佇まいを見せながらも、現実と闘う強さを演じていました。
ゴジラ作品では特攻を持って終わる作品が多いのですが、この作品では違う闘い方を提示しました。ネタバレになるので詳しくは書けませんが、最後に主人公が見せる笑顔に筆者は涙が止まりせんでした。
この作品はゴジラ映画史に残る名作となりましたが、この後ゴジラ映画を作ろうと思うものに、高いハードルを残したと言えるでしょう。かなりアメリカに対して批判的な内容ではありますがアメリカでもヒットしたようで、戦争に明け暮れる現実に対する危機感が、観客の心を揺さぶったようです。カラー版は未見ですが、機会があれば観てみたいと思っています。

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local_offerevent_note 2024年3月6日
  • スピノザ

    フィットボクシングでダイエットしてます