美術館での日々(3)

Yokoo in Wonderlandー横尾忠則の不思議の国(横尾忠則現代美術館)

【画像引用 旅色】
2023/9/16〜12/24
横尾忠則は1936年生まれ兵庫県西脇市出身の芸術家です。最初はグラフィックアートやイラストを仕事にしていましたが、1980年ピカソの絵に影響を受け、絵画作品の制作に軸足を移します。2012年兵庫県立美術館(旧兵庫近代美術館)の移転に伴い、跡地に横尾忠則現代美術館が建てられました。今回紹介するのはその企画展です。
この展覧会はタイトルから判るように、「不思議の国のアリス」を中心にして「夢」をテーマに選ばれた作品が展示されています。
タイトル通りアリスの出てくる作品もありますが、横尾忠則が繰り返し取り上げてきた、冒険活劇、三島由紀夫、高倉健、Y字路、神秘主義、インドといった多彩なテーマの作品が展示されました。
横尾忠則は制作の際には素早く描くため、大胆なストロークで描かれたものが多く、また物を絵画上に貼り付けたり、電飾や音響を付随させるなどバラエティにとんでいます。また古典的な技法で描いたものだけでなく、抽象的な手法や、看板絵のような平面的な手法も使っています。横尾忠則の絵画作品は膨大で、年数回の企画展を行っていますが、作品が重複することはほとんどありません。今回の企画展はすでに終了していますが、今後も企画展が開催されているので、興味を持たれた方はぜひ行ってみてください。
横尾忠則に関しては別の記事でも取り上げていますので、参考にまで。
美術館での日々(2)横尾忠則さんと遊ぼう

展示作品より
【画像引用 アートアジェンダ】

堀尾貞治あたりまえのこと千点絵画(bbプラザ美術館)

【画像引用 bbプラザ美術館】
2023/10/17~12/24
堀尾貞治(1938~2018)は神戸市出身の美術家です。1966年に具体美術協会(1953~72)に所属し、定年まで三菱重工業神戸造船所に勤務しながら、亡くなるまで創作活動を続けました。1979年東門筋のうどん屋の2階に現代美術専門の「東門画廊」(今はありません)を作りました。1985年以降、作品にはすべて「あたりまえのこと」というネームがつけられており、今回の美術展のタイトルにもなりました。
1985年より身の回りの物に1日1色を塗るという「色塗り」を開始します。1997年からは、毎朝起床後10枚程の紙を床にひろげ、一枚1分以内で書き上げる「一分打法」を開始します。「色塗り」「一分打法」は終生制作をつづけ、数万点を制作しました。定年後は並行してパフォーマンス活動も行うようになりました。そして長年パフォーマンスを行った場所で2018年、自ら命を断ちました。享年79歳でした。
「千点絵画」は2016年から行っていたプロジェクトで、廃棄された木工パネルを使って描かれたものです。おおよそ4号の大きさのパネルを使っていますが、形は様々で四角形以外にも、三角形、台形等もありました。アクリル絵具や墨以外にも、叩いたり、火であぶったりして表面に変化をつけました。活動は亡くなる前日まで続けられたそうです。
今回の美術展はその中から厳選した作品が展示されました。作品はいずれも豪快なストロークで一気に描かれたと思われる作品ばかりでした。多彩な色彩のものから、モノクロに近い表現まで、熱さと冷たさが同居する不思議な抽象作品でした。前衛の時代を駆け抜けたひとりの優れた美術家の、いわば命を懸けた作品群に筆者は圧倒されました。
美術展はすでに終了しましたが、またどこかで行われることもあるかと思うので、興味のある方はぜひ観に行って下さい。

展示作品より
【画像引用 bbプラザ美術館】

テート美術館展 光 ― ターナー、印象派から現代へ(大阪中之島美術館)

【画像引用 大阪中之島美術館】
2023/10/26~2024/1/14
「テート美術館展」はイギリスのテート美術館に所蔵される、近代から現代にかけての美術作品の中から、120点あまりの作品が紹介されるものです。
テート美術館は、砂糖業で財を成したヘンリー・テート卿(1819~98)のコレクションを中心にして、1897年に開設されました。所蔵された作品は展覧会のタイトルにもなっている、近代イギリスのウィリアム・ターナー(1775~1851)を筆頭に、印象派から現代にいたる多くの国の作品を紹介するもので、絵画だけでなく、彫刻やインスタレーション作品も含んでいます。
ターナーは絵画空間において「光」を重視した画家で、彼の作品は後に続く印象派やモダンアートの先駆的な作品といえるものです。今回の展覧会はこの「光」をテーマにして、多くの美術家たちが、どのように「光」を描いてきたかを紹介するものです。
筆者はターナー作品がかなり好きなので、美術展を観に行きました。タイトルからターナーと同時代のイギリスの美術家の作品を中心にしたものだと思っていたのですが、実際にモダンアートに至る多彩な作品群で、モダンアートも好きな筆者としては、実に見応えのある内容でした。
まずターナーの作品を観ることが出来たことに感激しました。ターナーのような作品は、サイズや色調など画集では判りにくいものが多く、実物を観ていろいろと腑に落ちる発見がありました。同時代のウィリアム・ブレイク(1757~1827)の神話的な光の世界、ジョン・コンスタブル(1776~1837)の虚ろな明るさも素晴らしかったのですが、特に初めて名前を知ったジョン・ブレット(1831~1902)の、海上に差し込む雲間からの太陽の光を描いた作品には、ため息の出るような荘厳な美しさを感じました。美術展のポスターにも使われていますが、これも実物を観ないと実感できない美しさです。
ここからは印象派以降の現代アートが紹介されます。これらの作品も素晴らしいものでしたが、やはりターナーと同時代の作品が観ることが出来た時間が、筆者にとっては至福の時でした。
美術展はすでに終わっていますが、またこのような美術展が開かれることを願ってやみません。

展示作品より
【画像引用 FACE BOOK】

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local_offerevent_note 2024年2月2日
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