障害者と(として)の恋愛について

恋愛以前

私は現在60歳の精神障害者の男性です。高校生の時に発症しましたが、その際は治療など行いませんでした。就職して間もなく仕事に行けなくなり、その時に心療内科を受診し、現在も続いています。数年前にうつ病の診断で手帳を取得しました。後に発達障害の診断が出たので、うつは発達障害の二次障害と思われます。大学卒業後30年あまり福祉の仕事してきましたが、定年前に退職して、現在はB型作業所で利用者として働いています。
先年亡くなった妻と二人の娘が家族にいます。妻は脳性麻痺、次女は発達障害です。。
長年自分が障害者との意識はありませんでした。
高校生の頃に障害者で差別される人たちの話を読んだ際も、「苦労知らずの自分には想像もできないような辛い体験なんだろうな」と思っていました。
ただ自分が平均的な普通の人だとはあまり思っていませんでした。他の人と興味の対象が違っていたり、普通に話している事で笑われたりしたことで「自分は他の人と違うのかなあ」となんとなく思っていました。
ただそれで凄くいじめられた経験はなく、また類は友を呼ぶというか、私の友人もどこかしら変わった人が多く、あまり周りとの違和感は感じなかったように思います。「ヘンな人」とよく言われたが、むしろ誉め言葉とさえ思っていた気がします。
高校のころまであまり恋愛感情を持ちませんでした。人並みの性欲はあったけど、具体的に誰かを好きになるということはありませんでした。
高校生のころ同性に対して性的な興味を持ったこと一時期ありました。具体的に誰かを好きになるということではなく、漠然とした興味を持っただけでした。大学に行く頃になると、自然と異性に興味を持つようになり、同性への興味はなくなりました。当時の精神医学では、思春期には一過性の同性愛傾向が起こる場合があるが、成長と共になくなるという考え方が一般的で、まあ自分もそのケースかなと思っていました。

ポジティブな恋愛観

不登校経験のため3年遅れで福祉系の大学に入学しました。そこで入ったボランティアサークルで出会ったのが前述の障害者の妻です。最初は先輩後輩の関係でしたが、次第に恋愛感情を持つようになりました。きちんとした恋愛感情を持つのが初めてだったので、最初は自分の感情を扱いかねていました。
言語障害はほとんどなく、身辺自立も出来ている人なので、あまり障害者として接した意識はなかったように思います。ただ彼女の話の端々から、障害に対する想いは伝わってきました。話をするのがとても楽しく色々なことを話しました。ただ単に話しやすい人だろうと思っていたので、恋愛感情はこちらだけのものだと思っていました。
しかし話しているうちになんとなく向こうもこちらに対して恋愛感情を持っているように思えてきました。ダメでも元々だと思い思い切って告白してみました。すると彼女も好きだったと言ってくれました。
もちろんんうれしかったのですが、次の瞬間には不安のようなものが襲ってきました。相手の障害よりも、自分みたいな人間が恋愛しても本当に良いのだろうかという気持ちでした。
この感情はおそらく妻が亡くなるまで、心の底にずっと持ち続けていたように思います。
妻と付き合っていることは積極的には話していませんでしたが、特に隠すようなこともしていなかったので、自然と知れ渡りました
「やっぱりそうか」という声と、「意外やった」という声が聞かれました。そもそも私が恋愛するタイプに思わなかった人もいました。その中で少し気になったのが「よくやった」と言う声でした。ようするに障害者と付き合うのは偉いということでした。人と付き合う資格があるのだろうかという思っている自分にとって、あまりにも意外な感想でした。
ある文章を読んでいると、ある公害病患者の支援者が、患者と結婚して自分はこれから自分のこととして、この公害病に向き合うことが出来る書いていました。またかなり高名な評論家がダウン症の子供が出来て、障害者問題を我がこととして考えられるようになったと書いていました。正直なぜそんな考え方が出来るのかと不思議でした。多分同じような発想なんだなと思いました。

ネガティブな恋愛観とまとめ

一方逆の意見も色々聞きました。
妻がサークルの先輩から「障害者に恋愛感情は持てない」と言われたという話を聞きました。しかもその対比で、当時人気のあったあるアイドルの名前をあげて、「付き合うのならこんな子がいい」と言ったそうです。私はそのアイドルがどちらかというと好きじゃないタイプだったので、余計になんか腹が立ちました。
別の機会に、ある重度障害者のところに在宅ボランティアに行ったとき、同行したボランティアの先輩が「お互い本音で話し合いましょうね」と言うと、その障害者に「健常者が本音で話すると、大体障害者が傷つくことが多いと」言いました。上の話を聞いた後だったので、多分この人も色々なことを言われてきたんだなあと思いました。ちなみにこの方は精神障害者を障害者と認めていませんでした。
上記の意見とは別の考え方も聞きました。高校時代の教師で自分が障害者と付き合ってることを話して、色々な思いを話しました。当時この教師は自身の離婚調停をしているさなかで、その話を聞いた後、「仮にその人と別れることになっても、その事を後悔することはないぞ」と言われました。そんな事を特に考えてはいませんでしたが、正直一番腑に落ちる意見でした。
その後妻は家庭の事情で退学し、実家に帰りましたが、そのまま遠距離恋愛を続け、卒業し就職が決まった際に結婚しました。両親は私が結婚する日がくると思っていなかったようですごく喜んでいました。後で聞いたのですが結納の顔合わせの際に「よく息子のもとに嫁いでいただきました」と言ったらしく、後に妻から「普通逆やろ」と笑われました。
その後色々な事がありましたが、それはまた別の形で書くこともあると思います。妻との生活は私に色々なものを与えてくれました。残りの人生でそれを大切にしていこうと思います。

ブログランキング・にほんブログ村へ
local_offerevent_note 2020年1月7日
  • スピノザ

    フィットボクシングでダイエットしてます