私のベスト3映画(外国映画編)その1

はじめに

コロナ禍の影響で、家で過ごしている方も多いと思いますが、こんな時はDVDや配信で普段あまり観られない映画やドラマを鑑賞するのも一興かと思います。というわけで外国映画の中から私の推しベスト3を挙げてみたいと思います。今回はその第1回です。

2001年宇宙の旅 (A Space Odyssey)1968年

【画像引用 ナガムービー】
スタンリー・キューブリック(*1)監督。アーサー・C・クラーク(*2)原作。アメリカ映画。クラークの原作という形になってますが、実際には監督と原作の共同作業で、映画と小説が作られました。
先日NHKでこの映画の成り立ちを紹介する番組が放送され(アナザーストーリー運命の分岐点・「“2001年宇宙の旅”未来への扉は開かれた!」)、あまり知られることのなかった映画の成り立ちについての話が紹介されました(ファンにとってはよく知られている話かもしれませんが)。
「博士の異常な愛情」(1963)で特異な才能を評価されたキューブリックが、地球外生命体との遭遇をテーマにした映画を作ろうと考えました。それまでSF映画というと怪獣や宇宙人との闘いを描いた、どちらかというと子供向けのB級映画のイメージ強く、キューブリックはそういうSF映画観を覆すような作品を創ろうと思っていました。
その際に彼にヒントを与えたのがクラークの小説「幼年期の終わり」(1952)でした。この作品は地球外生命体とのファーストコンタクトを描いた名作として有名なSF小説で、執筆当時の科学的知見を使いながら、地球外生命体との出会いにより、人間の世界観が変容していく、哲学的な内容でした(筆者は未見です)。
当初はこの作品の映画化も考えたようですが、版権の関係で製作が出来ず、キューブリックはクラークに話を持ち掛け、新たにストーリーを作り映画を作ることにしました(この製作過程については、上記の番組が判りやすく参考になります)。
映画の試写会では、スポンサーの評価は散々でしたが、上映が始まると若い世代を中心に熱狂的に迎えられました。映画が発表された1968年は、世界的な学生叛乱の時代で、また芸術や文化の新しいムーブメントが起こった時代でもあり、その時代の雰囲気とも共鳴し、社会現象になるほどのヒット作になりました。

【画像引用 スクリーンオンライン】
私はこの映画を1978年のリバイバル上映の時に初めて観ました。映画の巻頭。太陽系の様子がR・シュトラウス(*3)作曲の「ツァラトゥストラはかく語りき」(1896)をバックに映し出されますが、そのすぐ後に巨大な黒石板(モノリス)の前で興奮する類人猿の姿が描かれ、「えっ、これのどこが宇宙の旅?」と頭の中が「???」だらけになってしまいました。これ以上はネタばれになるので詳しくは書けませんが、141分に渡る映像の饗宴が繰り広げられ、全く理解できないラストと共に、最後はJ・シュトラウスⅡ世(*4)の「美しき青きドナウ」(1867)をバックに、エンドクレジットが流れ映画は終わります。
この映画、小説版を読むと不可解なラストの意味がわかります。クラークもこの点を危惧したため、詳しいナレーションを付けることを提案したのですが、意味が固定されてしまうことを嫌ったキューブリックはこの提案を一蹴したそうです。
私はこの小説版も読みましたが、結果的にキューブリックの判断が正しかったと思います。確かに小説版はよくできており、これはこれで名作だと思うのですが、映画の持つ圧倒的な存在感の前では、少し説明的すぎるように思いました。


【画像引用 バンガー】
クラシックの音楽をバックに次から次へと繰り広げられる映像の絵巻で、宇宙シーンの描写はNASAの慣習に基づいて行われており、月面シーンはその後に実際に撮影されたものと合致して、クオリティの高さが証明されました。また終結部に展開するサイケデリックアートのような映像は、まだCGがなかった時代とは思われないような出来です。
上にも書いたように、説明を排して映像ですべてを語らせようとする内容は、後のS・スピルバーグ、J・ルーカス、J・キャメロン、R・スコットなどにも大きな影響を与えました。
この映画はあまり何も考えず、ひたすら映像美に酔いしれると内容だと思います。

【画像引用 パスワードは1万年愛す】
*1 スタンリー・キューブリック
スタンリー・キューブリック
*2 アーサー・C・クラーク
アーサー・C・クラーク
*3 リヒャルト・シュトラウス
リヒャルト・シュトラウス
*4 ヨハン・シュトラウス2世
ヨハン・シュトラウス2世

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local_offerevent_note 2020年6月19日
  • スピノザ

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