私のベスト3映画(外国映画編)その3

ブレードランナー(Blade Runner)1982年

【画像引用 シネモア】
リドリー・スコット(*1)監督、フィリップ・K・ディック(*2)原作、アメリカ・英領香港(*3)合作映画。1982年製作。
この映画は製作年と同年に、日本でも公開されました。70年代の後半は、「スターウォーズ」(1977)や「未知との遭遇」(1977)などの、著名な俳優が出演し、大掛かりなSFXを使い、大人の鑑賞に堪えうるSF映画が輩出した時期でした。また同年には「ET」も公開されていました。これらの作品はいずれもヒットしており、空前のSF映画ブームの時代でした。
「ブレードランナー」もこの流れに乗って作られた映画でした。しかし他の映画がアクションや家族愛などを押し出していたのに対し、この作品はハードボイルドタッチの、どちらかというと暗めの映画のため、それらを期待した観客に受けが悪く、日米ともにあまりヒットしませんでした。
ストーリーを説明すると、2019年の近未来のロサンゼルスが舞台の物語です(今や過去の話ですが)。人類は宇宙に進出しており、過酷な宇宙に適応できるレプリカントという名の人造人間を開発していました。彼らは人間より高い能力を持っていましたが、能力と引き換えに短い寿命しかなく、また人間的感情を持たない存在であり、同じ人間としては認められず、奴隷のような扱いを受けていました。しかし次第に彼らの中に人間的感情が芽生えるようになってきました。ある時、奴隷的境遇から逃げ出そうとして、宇宙植民地を脱走したレプリカントたちが、自分たちを作り出した大企業の社長でもある博士に、自分たちの寿命が延びるように頼もうと地球に潜入しました。この事態を重く見た地球警察は、これらレプリカントを「処分」するため、引退していた腕利きの専任捜査官(ブレードランナー)を復活させます。ブレードランナーは彼らとの壮絶の死闘を始めるのですが…。
前評判は散々でしたが、多くのSF好きの映画ファンから、「これは凄い映画じゃないのか」という声があがり、名画座(*4)などで上映されているうちに、口コミで人気が高まり、次第に熱狂的な人気を集めるようになりました。特に1992年に作られた「ディレクターズ・カット」版がリバイバル上映され、監督の長年不満であった部分が、全面的に改定された映像で、この映画の真価が改めて評価されるようになりました。
同じ時期に登場したサイバーパンク小説と共に有名になり、サイバーパンク映画の傑作として評価されるようになりました。またこの映画のスタイルは、押井守、庵野秀明、大友克洋、ウォシャウスキー兄弟、といったクリエイターに大きな影響を与えました。また影響は映画にとどまらず、音楽・ファッション・小説などジャンルを超えた作品にも刺激を与えました。

【画像引用 ギズモッド】
私は大学生の時に、当時交際中だった後の妻と共にこの映画を観ました。私は元々ディックの小説が好きだったので、かなり期待をして観に行きました。しかしこの時あることで、妻共々少し精神的に不安定な状況でした。映画に妻を連れた行ったのも、少しは気分転換になるのではという思いもありました。
しかし作品を観ると、この思いが吹き飛んでしまう程の感動を感じました。暗く陰鬱でありながら、日本の歌舞伎町を思わせる多国籍な喧騒が描かれ、巨大な飛行船のディスプレイに日本の芸者がにこやかに笑顔を見せながら、手に持った「強力わかもと」の広告が映し出されました。自動車が空中を飛び交い、街には酸性雨が降り続いています。そしてこれを背景に行われるレプリカンたちの実在的で生と死を巡る真摯な問いかけ。そしてレプリカントのリーダーが最後に述べたセリフと、飛び立つ白いハトの映像を観て、自分でも理解できない涙が流れていました。個々の要素を取り上げれば、笑いが起きかねないガジェットが、物語に深い陰影を刻みつけていました。私の勧める映画にはこれまであまり興味を持たなかった妻も、この映画には衝撃を受けたようで、同じように涙を流していました。また妻にとっても終生のベスト映画になりました。
私はつい最近この映画の最新ヴァージョンを、録画したもので観ました。物語が終わりテーマ曲と共にエンドロールが流れたとき、始めて映画を観た時や、亡くなった妻を思い出し、いろいろな感情が想起する中で、私は再び涙を止めることが出来ませんでした。
この映画にはいろいろなヴァージョンがありますが、初めて観る人には2017年に作られた、最新のリミックス・ヴァージョンが良いと思います。SF映画にあまり興味のない方でも、楽しめる内容だと思います。またこの映画には「ブレードランナー2049」(2017)という続編もあります。

【画像引用 ワーナー】
*1 リドリー・スコット
リドリー・スコット
*2 フィリップ・K・ディック
フィリップ・K・ディック
*3 英領香港
映画公開当時は香港は英領であった。1997年中国に返還されました。
*4 名画座
名画座

終わりに


【画像引用 ツイッター】

私の「ベスト3映画(外国映画編)はこれで終わります。紹介した3作はかなりタイプの違う映画ですが、共通しているのは「映像を持ってその世界観を表現している」ことです。人は言葉を使って物事を考え、言葉を使ってコミュニケーションを行います。しかし人には言葉では表現できない感情を理性を持っています。それらは映像・音楽などによって補完することが出来ると思います。この3作の映画はそれぞれの形で映像による表現を極めた作品だと思います。また年代的にはいずれも昔の映画ですが、現在に至るまで多くのジャンルの作品に影響を与え続けている作品です。これらの映画の鑑賞により、新しい世界が広がることを願います。

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local_offerevent_note 2020年6月23日
  • スピノザ

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