明石市教育委員会へ取材に行きました

明石市は、Sdgs(持続可能な開発目標)の達成に向けて、優れた取り組みを行う自治体として、「Sdgs未来都市」に選定されています。そこで今回は、Sdgsの中の「質の高い教育をみんなに」に注目し、明石市教育員会の方々にお話を伺いました。

Q. 明石市では質の高い教育についてどのように考え、取り組んでいるのでしょうか?

A.明石市では主に

「個別に最適化」

「共生社会の実現に向けて子どもの充実感と達成感のある教育」

「違う学びの場であっても特性に応じた支援や配慮を得られて共に学ぶ」

「違いを受け止め共生をする社会へ」

ということを「質の高い教育」と考えているそうです。要約すると、「人それぞれ違うことを前提として共に生きるための教育」を「質の高い教育」としているようです。

この取り組みを実現するには、地域の方々のご協力が不可欠です。明石市では、地域の方々も積極的に学校運営に協力されています。

例を挙げると、次のような取り組みがあります。

・小・中学校に学校運営協議会を設置し、各学校で目標・方針を立て協議、

場合によっては幼稚園も一緒に協議する

・子どもたちと共に会議を開く

・小学校3年生からは、土曜日に地域の方々に勉強を教えてもらう

教育を保護者や学校に一方的に押し付けず、教育の当事者である子どもたちを人格と個性を持った対等な人間として扱い、意見をしっかり聞こうとする姿勢が伺えました。

Q. マイノリティの当事者と周囲の方々への教育はどのようになっているのでしょうか?

A.明石市ではまず、「ありのままが当たり前の社会へ」を前提としています。

具体的な対策として

・特別支援学級の増加

・医療的ケアが必要な子どもの場合、養護学校に通学するか

看護師を配置して通常学級へ通学するかに分かれる

・発達障がいの子どもへの支援では専門職員を配置する

・全中学校にエレベーターとスロープの設置する

・LGBTの人をはじめ、世の中には様々な人がいることを話す

・マイノリティの方々が話さなくても困らないようにする

・3割から4割の中学校では、女子のスラックス着用を認めている

・マイノリティについては教科書にも掲載されている

・出席簿が男女混合など性別の指標がなくなってきている

・障がいの専門職員を配置し、教員の理解も深める

それぞれの違いで差別をせず、配慮はしても過剰に気を遣わないという良い意味で「公平性」に近づく取り組みが明石市では進んでいます。決して上から目線の「してあげている」ではなく、マイノリティの当事者と周囲の方々が何に困っているのかを考えた取り組みとなっています。

Q. 今までにない速さで、様々な事柄が変化していく時代に対応していくには、「学校を卒業すれば終わり」ではなく、「学び直し」が重要だと思いますが、明石市では「学び直し」についてどのように取り組んでいるのでしょうか?

A. 明石市では「学び直し」についても積極的に取り組んでいます。

具体例として

・新しいことを学びたい人のために生涯学習センターを設置する

・コミュニティスクール(学校運営協議会)では大人も学べる機会を提供する

現代社会は想像以上の速さで変化し、新しい事柄や価値観が日々創られています。それは、「明日何が起きるか分からない、だからこそおもしろい時代」ともいえるでしょう。いつ何が起きても慌てないように、生涯学び続けることが大切だと思います。

Q. 親や保護者の意向や経済的事情で不本意な進路を選ばざるを得なかったり、進学を諦めざるを得なかった人々、または何かしらの理由で現在の学校教育に馴染めなかった人も大勢いらっしゃると思います。そのような経験をし、状況が変化したときに、再び学び「第二の学歴」をと考えた方々への明石市の取り組みについてお聞かせください。

A.様々な事情を持つ方に対しての取り組として

・神戸市と協力した夜間中学への通学

・高卒認定試験の支援

・定時制高校の設置

まだ完全とはいえませんが、様々な取り組みがされています。それだけ学びたい、勉強

をやり直したいという方が多いという事でしょう。インターネットを見ていると、「学生時代に戻りたい」という方は意外に多くいらっしゃいます。理由は様々ですが、やり直したい! 戻りたい!と思う皆さんの潜在意識には、「自分の人生に責任を持ちたい」という気持ちがあるのだと思います。そのような気持ちを持つ方々が増えたことは大変喜ばしいことだと思います。「自分の人生に責任を持ちたい」という方々の気持ちに応えるためにも、もう一歩踏み込んだ取り組みができたらいいなと思いました。

Q.これから先、様々な作業がAIに代替されていくと思います。そんな時代の中で従来の教育方法の見直しが問われていると思うのですがいかがでしょうか?AIに出来ないことを行う人材を育成するためには、どのような教育が必要と考えているのでしょうか?

A. 明石市が前提としていることとして、「これから先、ただ知識を習得するだけの

教育では、AIには絶対勝てない」ということがあります。

AIに出来ないことを行う人材を育てるための教育として

・学習指導要領の見直し

・人と話し合い、課題を解決していく力を身に付ける教育

・正しい情報を見極める力の育成

明石市教育委員会で伺った上記の3項目は、「根拠のない情報をインターネットに載せない」「自分の考えを一方的に押し付けず、周りの人を1人の人間として尊重する」というモラルの教育にも繋がるのだと思います。

Q. 格差社会が進む中、教育の機会を経済的理由で奪われた方々や教育を正しく受けることなく人生を送っている方々への教育のやり直しや環境についてお聞かせください。

A. 明石市が大切にしているのは、「格差を埋め、生まない社会へ」という目標です。

目標に向けての具体例としては

・ICT環境を有効活用し、不登校・入院・施設に入っている子どもたちへの教育の推進

・院内学級の設置

・教育が不十分な国から来た人々が学べる場の設置

・将来的にはバーチャル空間での学校の設置も考えている

教育を巡る課題としては、現在の公立の小・中学校は1日も出席せずに卒業することは可能です。逆に、卒業させないと通っていない本人に不利益が被ると考えていますが、形だけ卒業させることが本当の意味で通っていない本人のためになるのかという問題が浮かびます。

生まれた環境や病気などの不可抗力で人生が不利にならないようにするためには、教育環境が重要なのだと改めて実感しました。

同時に、教育をはじめとして人生における様々な後悔をやり直せる社会を作ることも、社会の一員としての大切な責任なのだと思いました。

最後に、Sdgsでは様々な目標が制定されていますが、そのどれもが教育を受けなければ実現できないものです。例えば「飢餓をゼロに」では、農作物の育て方を学ぶ必要がありますし、「人や国の不平等をなくそう」では、自分や自分の国の不平等の原因を分析する力がなくては、問題を解決できません。

Sdgsは2016年から2030年の15年間に達成するための目標として定められました。残された期間は約10年です。今後の10年を有効的に活用していくためにも、今、真剣に教育に取り組む必要があります。

長い間、決まっていた教育システムを変えるのは簡単ではありませんが、少しでも本当の意味で豊かな世界を作るためにも、教育システムをより良く変えていかなければならないと思いました。

Sdgs 17の目標

【画像引用 ヤフー画像】

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local_offerevent_note 2021年3月19日