特撮三昧(4)

「クライムズ・オブ・ザ・フューチャー」(2022)

【画像引用 公式HP】

「クライムズ・オブ・ザ・フューチャー」はデヴィッド・クローネンバーグ監督による近未来SF作品です。近未来において人の身体に、「進化」した新しい臓器が現れるようになりました。その状況を危惧した政府機関が、臓器の登録を制度化しようとしました。その中で主人公の男性は増殖する臓器を、手術場面で公開するという、アーティスト活動を行っていました。その彼を巡って様々な人々が暗躍しており、プラスティックを食べることで人類を進化させようとする集団や、それを阻止しようとする政府機関との暗闘が繰り広げられるのでした。
かなりありえない話の展開で、臓器の「進化」に関しても、作中では具体的な言及がありません。監督の主眼は、臓器に対するフェティッシュな欲望の解放で、臓器のグロテスクな描写が行われます。クローネンバーグ監督はこれまでの多くの作品でも、人間がフェティッシュなものに囚われていく作品が多く、この作品もそのひとつだと言えます。
しかし映画館で観ていて少々退屈な感じで、少し眠たくさえなりました。クローネンバーグ作品では、対象を客観的に淡々と描くことが多いのですが、この作品はそれにしてもあまりにも劇的な展開に乏しく、美しい(!)臓器の描写には惹かれましたが、少し単調な気がしました。
最後はよく判らない終わり方をしました。期待が大きかっただけに、少し残念な気がしました。ただクローネンバーグ作品は初見の印象が悪いことが多く、再度観ることで作品の真価に気づくことが多いので、また機会があれば再見してみたいと思います。クローネンバーグ監督に関しては、別の記事でも触れてますのでそちらも参照してください。
世界の映画監督(1)デヴィッド・クローネンバーグ

「映画 仮面ライダーギーツ 4人のエースと黒狐」(2023)&「映画 王様戦隊キングオージャー アドベンチャー・ヘブン」(2023)

【画像引用 映画情報ドットコム】
この2作品は、TVで放送中(2023年7月時点)の「仮面ライダーギーツ」と「王様戦隊キングオージャー」の劇場版です。
「映画仮面ライダーギーツ4人のエースと黒狐」は中澤祥次郎(1971~)監督作品です。
「仮面ライダーギーツ」はデザイアグランプリと称するサドンデスゲームに、仮面ライダーとして参加して、最終勝者はこの世界を作り変える権限が与えられます。しかし次第に闘いは混沌を極め、複雑に入り組んだ陰謀にライダーたちは翻弄されることになります。
映画は番外編的内容で、未来からやってきた2人の愉快犯的テロリストが、世界を4つ
に分裂させて、「世界滅亡ゲーム」を仕掛けます。主人公の仮面ライダーギーツ浮世英寿(うきよえいと)は4人に分裂して、4つの世界に現れます、しかし人格も4つに分裂し、「力」「知恵」「運」「心」に別れた主人公を、他のライダーが元に戻そうとするのですが。
あらすじから想像できるように、かなりギャグテイストの作品になってます。敵役をやっているテロリストのひとりを演じているのが、芸人のチョコレート・プラネットの長田祥平(1983~)であることから予想がつきます。長田の振り切った演技もさることながら、シリーズ作品ではクールな印象の強い主人公ギーツの演技に対して、この映画では分裂した人格がいずれもバカキャラで、特に「心」がただただオカリナを吹いているだけというのが笑えます。実質このシリーズが初めてというギーツ役の簡秀吉(2002~)の演技も、なかなか秀逸で楽しませてくれます。しかし戦闘シーンはは劇場版ならではの激しいもので、CGと実写を組み合わせた東映特撮を味わうことができます。
「映画 王様戦隊キングオージャー アドベンチャー・ヘブン」は上堀内佳寿也(1986~)監督作品です。「王様戦隊キングオージャー」は異世界にいる5人の王様が、侵略を企てる地下帝国バグナラクと闘う物語です。映画は番外編的内容で、王の中の王に戴冠するシュゴッタムの王キラが、先祖の王に挨拶するため「死の国」へ向かいます。過去の王ライオニール・ハスティは最初は王たちを歓待します。しかしライオニールはこれから起こる災厄を予言し、現在に王たちではかなわないため、自分が蘇って再び王になると宣言する。キラたち5人の王は、ライオニールと闘うことになります。
5人の王様が戦隊ヒーローになるという設定が斬新で、筆者ここ最近の戦隊もの中では秀作ではないか思います。ここで予言される災厄は映画以降のTVシリーズに登場するので内容的にも上手くつながっています。
今回はゲストの俳優陣がなかなか豪華で、ライオニール役の中村獅童(1972~)死の世界の別の王イロキを雛形あきこ(1978~)ライオニールの側近デボニカを声優の佐倉綾音(1994~)が務めています。中村獅童は悪役とは言え自らの大義にも基づいた行動を、堂々たる演技で魅せてくれます。雛形あきこは筆者が予備知識なしで観たため、執念で行動する凄まじさに俳優が誰かわからず、パンフを見て知りかなり驚きました。佐倉綾音はアニメ「進撃の巨人」などにも出演する実力派声優で、ほぼ初めてらしい実写での演技も、なかなか優れたものがありました。こちらも最後はCGと実写を駆使した迫力のあるある戦闘シーンでした。また終わり方がなかなか粋な感じでした。
両作品はシリーズを前提にしながら、TV版では出来ない思い切ったストーリー展開と、豪華な特撮映像を魅せてくれます。すでに上映は終わっていますが、配信等で観ることが出来るので、興味のある方は観てください。

「マッド・ハイジ」(2022)

【画像引用 シネマトゥデイ】
*以下の文章には一部ネタバレの記述があるのでご注意下さい*
映画「マッド・ハイジ」はヨハネス・ハートマン、サンドロ・クロプフシュタイン(いずれも生年不明)共同監督作品で、ヨハンナ・シュピリ(1827~1901)作「アルプスの少女ハイジ(1880~1)を原作(?)とする、バイオレンス・アクション作品(!)です。
物語はスイスが舞台で、スイス有数のチーズ会社の社長が大統領を務めていますが、恐怖政治による独裁国家で、しかも大統領の経営する会社のチーズ以外を食べてはいけないという法律を施行し、政策に反対する市民を暴力で容赦なく弾圧しています。
ハイジは黒人のペーターと付き合っていましたが、ペーターは禁制のチーズを闇取引していたことがばれて、市民の面前で処刑されます。また反対運動を行っていたおじいさん(おんじ)は拠点の山小屋ごと爆破されます。
ハイジは復讐を誓いますが、矯正施設に無理やり入れられてしまいます。そこでは古株の囚人がいじめを行っています。ハイジはいじめに耐えながら、拷問による負傷で、車いすを使っているクララと出会い、改めて復讐を誓うのでした。
という、ムチャクチャなお話です。とにかく全編バイオレンスの連続で、やたらと身体の爆発・切断が行われます。またハイジも敵に対しては容赦なく残虐行為を行い、ペーターもいわゆるパリピ系のチャラい男であまり関わりたくないタイプの男性です。大統領もかなり頭のおかしい人で、協賛していた企業の経営者を人間兵器として改造するという、鬼畜な行動を行います。
死んだと思っていたおじいさんが実は生きていて、彼が率いる反政府組織と共同して、独裁政権を倒し、ハッピーエンドで終わります。妙にかっこいい終わり方が笑えます。
正直あまり万人にお勧めできる映画ではありません。特に残酷シーンの苦手な人は観ないほうがいいかもしれません。しかしそこらへんに問題がなければなかなか痛快の作品で、勧善懲悪(善のやり方がえげつないですが)ということもあり、ある意味安心(!)出来る作品です。上映はすでに終わっていますが、興味のある方は配信等でご覧ください。

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local_offerevent_note 2023年11月14日
  • スピノザ

    フィットボクシングでダイエットしてます